全高P2023宮城大会報告その2

第1分科会「地域教育」
テーマ コミュニティスクールとグローカルの光~地域教育魅力化の取り組み~

日時:2023年8月24日(木)13:30~16:30
場所:東京エレクトロンホール宮城
参加規模:約1000人


●基調講演 宮城教育大学 教育学部 教授 市瀬智紀 氏
演題「家庭と学校から地域と世界に導く教育へ」
   ~個人の変容と社会の変革を促すために~

〇個人の変容と社会の変革をうながすために
 ・生徒が社会との関りをもち、その活動をすることで自分を高める(自己肯定感があがる)
 ・地域と生徒がともに学ぶ中で変容がある
 ・「1人でできることではなく 10人でできること 100人でできることを考えよう」
〇社会に開かれる学校 
 ・活動自体は小さな展開だが、持続性を大切に、地域に溶け込む活動につなげる
 ・SDGs(とESD(持続可能な開発のための教育))を活動理念として掲げることも活動の持続性につながる
〇変容的行動
 ・活動の前の準備段階でどのような生徒像を求められているかのリサーチも必要
 ・社会的インパクト評価を生徒の評価軸に加えると生徒自身も行動力が変わってくる
  (活動がどの程度社会にインパクトを与えられたかを明確にすることで意識向上につながる)
〇入試や採用にかかわってくる時代
 ・入試や採用のための活動ではないが、地域社会のかかわりがある生徒はいろんな意味で厚みがでてくる
▶講演を聞いての感想
 ・探求するためには生徒と教師の事前調査も重要な要素と感じた。現状では地域に足を運んでリサーチできる先生方の確保は難しいと考える。本気で探求するとなったら全校あげての努力が大切と思った。
 ・地域社会は探求の理想のフィールド。地域に学校の存在をアピールできる。
 ・現状は探求の担当の教師の負担が重く、探求と教科の学習がリンクしていない現状がある。


●パネルディスカッション
学校と地域が連携・協働することが、子どもたちの教育環境を充実させるとともに地域の教育力を高めることにつながる。学校と地域の魅力ある取り組みを紹介しながらこれからの学校と地域の連携について共有。

〇宮城県志津川高等学校の活動紹介
 ・震災後に生徒数激減。生徒の地域参加を特色とした学校を目指す。震災で「南三陸」という名が知られるようになったため校名も「南三陸高等学校」に。地域の特産品をネット販売する活動を通して地域とのつながりを持つ。地域のみなさんも「おらほの学校」と呼び、地域唯一の高等学校を応援してくれている。
▶ネット販売など社会的活動体験の成功は教育力大!教育課程に活動を位置づけるカリキュラム改革が必要。地域の企業と協定を結ぶなど持続可能な取り組みを行える工夫が必要となる。生徒の学校生活満足度が上がってきている結果につながる。

〇一般社団法人マザー・ウイング「NPO法人のびすく泉中央」の活動紹介
 ・来館できるのは中学生と高校生のみ(大人と小学生以下は入館できない)親でもない教師でもない存在。スタッフとアルバイトの大学生で運営、イベントなどで地域の方を招き入れ交流会を開催。生徒の居場所として①勉強②おしゃべり③一人で過ごせる空間、の利用が多い。
▶地域がつなぐ学校・PTA・子どもの居場所の協働。中学生と高校生のみを対象とした点が興味深い。家庭ではない場所での居場所確保。利用者は年々増加傾向とのこと。子育てを終えた年代の方々(意味ある他者)に協力を仰ぎ、子どもとかかわる地域の大人を増やす活動も行っているとのことで、子どもの居場所のみならず地域住民とのつながりもあり、居場所のみならず、生徒自身の世界観の広がりも期待される場所となっているように感じた。

〇宮城県仙台第三高等学校の活動紹介
・学校前にある公園の荒れたまま放置された沼を地域住民とともに改善していく取り組みを行う。町会とのやり取りから、ほぼすべて生徒に任せる。実地調査や町会との会議の中で、悩み考え、喜びを地域のみなさんと共有。生徒が自ら問題を見つけて対処していく。
▶自分で考え行動してく力を育み、将来社会で活躍できる人材育成の一環とすることを先生方が共通にしっかりと認識しておられる印象をうけた。SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校としての予算もあるが、一番は学校独自のカリキュラムを作る教師側の努力によるものが大きいと感じる。探求の授業を通して教員の指導力も向上しているとのこと。机上で情報を収集するだけの「探求」ではなく、自分事としてとらえられる地域の問題にあえて向き合うことを「探求」としたころが、大胆な発想で印象深かった。